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従兄弟と兄弟の違いってなんだろう? "従"―――従う、という漢字がつくだけで、文字にすれば殆ど同じだ。 大抵は兄弟の方が家も同じ、育った環境も同じ、ずっと一緒にいて共有した時間の長さからかとても気が許し合える。 ―――従兄弟もそれと同等だった場合は? たった1つ今の私が思う決定的な違いがある。 従兄弟は社会的にも恋愛の対象になり得るということだ。 血の繋がり、というのも兄弟とはまったく同じで、―――従兄弟とは半分同じだから。 sister or lover 「〜!」 「はーい!今いくー!!」 少年―――菊丸英二は目の前の自分とはよく見知った相手の家のある一室に向かって声を張り上げた。 もう起きてるだろうことは既にカーテンの開いている状況から判る。その部屋の主は篭もった空気を交換するために起きたら真っ先に窓を開けるから。 その一室からかすかに聞こえた返答の声に英二は部屋の方を微笑ましく見やった。 「ごめん、英二!…おかーさん、行って来ます!」 家の中の母親へと挨拶をしながらバタバタと家からが出てきた。 英二の乗る自転車の籠に鞄を入れて、自分は後ろへとまたがる。 「よし、おっけー。しゅっぱーつ」 「しっかり捕まっとけよ」 自転車が景気良く走り出す。 は菊丸英二にとって従姉妹に当たる。正確には3ヶ月だけの方がお姉さんだが、学年は一緒だった。 のお母さんのお姉さんが英二のお母さんで、2人の母である姉妹はとっても仲が良かった。 連絡はしょっちゅう取り合ってるみたいだし。お互いの子供同士のお泊りなんて日常茶飯事。中学生になってからは少し自粛するようになったが…。それは部活もあったりとかで忙しくなったからで。 と英二は同じ青春学園に進んだ。 2人たちの仲良さは輪をかけて強まった。まるで双子みたいに、とっても仲良し。 1年生の時は同じクラスだったりもしたから一緒に居る時間は一日の半分以上を占めていた。 それは、3年になっても年頃になっても変わらないものだった。 口に出すことはなかったけれど、少なくともお互いそう思ってたと思う―――。 「英二!」 今日は珍しく朝練がないということで、一緒に来た―――朝練がない日は一緒に行こうと約束している―――が英二のいる教室の扉の前まで来ていた。 「?どしたの?」 のクラスは3階にあって、自分たちのクラスである3年6組はひとつ下の2階に位置していた。鞄を持っていないところを見ると、どうやら一度自分の教室に鞄を置いてから来たらしい。 別れたばかりなのにまた追って来たので、何かあったのかと英二は席を立ちの方へやってきた。 「ごめん。1時間目古文なんだけどさ、古典辞書忘れちゃってて。借りていい?」 「いいよー。ちょっと待ってな」 手を合わせつつ頼んでくるに笑みを浮かべ英二はロッカーから辞書を取りだしに渡した。 「ありがとー。助かった!英二んクラスは今日はある?何限?」 「うーと……」 英二が思い出そうと唸っても思い出せずにいると、廊下を歩いてくる見知った級友の姿が見えた。 「あ、不二ー、おはよー!にゃー、今日の古典て何時間目??」 「おはよう、英二。さん」 にっこりと笑みを浮かたまま、不二がやってくる。 「3時間目かな」 「おはよう、不二君!そっかー、じゃぁ終わったら返しに来るね」 「わかった」 はじゃまたね、と不二と英二を順番に見やってから自分の教室へと向かった。 パタパタと去っていくを見送りながら隣の不二が小さく口を開いた。 「―――英二とさんは本当に仲が良いね」 突然何を言い出すんだ、この親友は。 今の会話の中で、一体絶対鉄壁の笑顔を持つこの親友は何を感じたというのか。 「ま、まあね。だっては従妹だし」 「そうだね…。でも、英二はさんのことなんとも思ってないの?」 「―――え?」 「好き、じゃないの、ってこと」 俺が、を? 「何で?不二ってばー…だって俺とは従妹なんだよ?も、こーんなちっちゃい頃から知ってて〜。は妹みたいなもん、だし」 「そうなんだ」 「うん、そう…そう、だよ」 そうだよ。 そうに決まってるじゃん。 何、言うんだよ… お願いだから俺とを乱すようなことはしないで。 俺はの傍にずっと居たいんだから――― 最後の方は消え入りそうになった。 「英二!」 3時間目始まる前の休み時間。 は急いでバタバタと3−6に駆けこんで来た。 「ごっめーん、結局ギリギリになっちゃった」 はバタバタと英二のところへ寄り、古典辞書を差し出した。 「ホント、ありがと!助かった!こういう時はさー、英二と違うクラスでよかったなーって思う。やっぱ一緒がよかったけどね」 「だよにゃー。そしたら一緒にバライロチュウガクセー生活を送れたのににゃー」 「そうだよにゃー」 「にゃー」 2人でにゃにゃー言っては笑い合った。 そこへ、不二が来て、はそれに気付くと不二の方へと顔を向けた。 「あ、そだ。不二君!あのね、ちょっとココの問題教えてくれる?」 「どれ?」 これ、とはさっきの時間が数学だったのであろういくつかの問題を指差す。 不二はさっと問題に目を通し、これはね…とすんなり説明を始めた。もそれを一生懸命聞いて書き込んだりしている。 「ありがとー!なんかコレだけ宿題になっちゃったんだけど、解けなかったんだよね。助かった」 「いえ。どういたしまして。でもさんのクラス、進むの早いね。僕たちまだそこまで進んでないよ。ねえ、英二?」 「オレに数学聞くにゃよー」 「もうっ、英二も不二くん見習いなよー」 「教わってるにいわれたくないCー」 どこぞの万年寝太郎君みたいに“し”を伸ばして口を尖らせる。 勉強… を助けて来たのはいつも俺だったのに。 出来なくたっていつも一緒に頑張って来たじゃん。 不二に、助けて貰うんだ… それで、なんでそんなに嬉しそうなの…? なんで、2人はそんなに仲良しなの? ぐるぐると嫌な考えばかりが英二を取り巻いていく。 急に黙り込んだ英二をは不思議そうに首を傾げた。 「どったの、英二?」 「ん、なんでもないよ。ほら、早く行かないと予鈴鳴るぞ!」 「それじゃ、私もういくね!あ、今日の放課後は見に行くから!」 また放課後、と残しては行ってしまった。 「僕らも教室に戻ろうか」 不二に促されて菊丸は複雑な表情で席についた。 ―――放課後 パーン 心地よいボールの弾む音が校舎に反射して響き渡る。 音の中心であるテニスコートのまわりは女生徒で溢れかえっていた。 「うわ…相変わらずスゴイや」 はその勢いに押されそうになりながらも、少し遠くの方からレギュラーコートの方を見つめた。 「あ、さん」 「あれ、不二くん。練習始まってるみたいだよ?」 レギュラージャージを着ているものの、まだ全く汗をかいていない様子の不二がそこにはいた。 「今日、日直だったからね」 「そーなんだ〜。じゃぁこれからだね。頑張ってね!」 「ありがと。エージにもさんがココに見に来てること行っとくよ」 不二は笑顔を崩さず去っていく。 不二がコートの中に入ると英二に近寄り、の方向を指差し2人は手を振ったので、も笑顔で振り返し「頑張れ」と口パクで伝えた。 目敏く先ほどの不二と会話していたのを見ていた女生徒の一人がの方を指差し、隣の子に何かを告げる。そんな様子を見てはに、と不敵に笑ってやった。 (話したいなら話せばいいのに…) 不二とは英二を介しての知り合いだった。 今のように2人だけで話す機会はあまりない。 ただの顔見知りだった筈なのに、の心はドキドキいっていた。 英二を応援しに来た筈のの視線は自然と別の人物へと注がれていた…。 一学期も終わりに近づいた頃。 生徒たちは期末試験が終わり夏休みへと思いを馳せている。 「エージっ!」 勢い良くが英二の部屋へと掛け込む。 へへーんと偉そうに見せたその手には期末試験の結果表。 そこには堂々と総合順位15位と書いてあった。 は通常30〜40位くらいであったのが、ココへきていきなりの飛躍で、「ちゃんは成績があがったのに英二は…」と母親からお小言を貰ったばかりであった。 (あ〜そういや試験前不二と勉強してたっけ…) ぼんやりとそんなことを思い出す。 「不二くんに見てもらったおかげかなぁ?」 へへーと少し顔を赤らめて告げ、そしては内緒話でもするように英二へと小声で話し掛けて来た。 「それでね、あたし、不二くんと付き合うことになったの…」 の幸せそうな顔に、笑顔を返すのが精一杯だった。 夏休みに入ってからもはテニスコートへと来ることが多かった。 今までは英二を応援するためのものであったのに、の目的は自分ではなくて。 2人は休みの時も一緒にいた。 今まで俺と一緒に居た時間をは不二と過ごしていた。 時たま家に遊びに来た時にその時のことを話す表情はすごく嬉しそうで輝いていた。 不二は頭もイイし、テニスも出来るし、顔もイイ。 俺以外のそういう存在には惹かれていったんだ…。 判っている―――不二は確かにいいやつだ。俺の自慢の友達の1人なんだから。 不二の方もまた自分を「天才」だとかそういう羨望の眼差しでしか見られない中、そのままの不二を自然に受け入れてくれるの存在が余程嬉しかったに違いない。 ズ キ ン イトコなのに。ただのイトコなのに。 全く赤の他人で、むしろ他人より近しい存在で―――けれど兄妹ではない。 けど、俺は。 「なんで俺じゃダメだったの…?」 わかってるん、だけど。 わかってる―――俺はの「兄」にしかなれない。 「エージ〜!」 「?」 「お疲れー。ホレ、ドリンクだよん」 いつものように練習を見に来ていたがドリンクを持って英二の方まで来ていた。 「にゃんで?珍しいじゃん」 「んー?気紛れかな…というか、英二のプレイスタイルがちょっと苛々してるみたいだったから」 「何?心配してくれてんのー?」 「…大丈夫?無理しちゃダメだよ」 「大丈夫だよ」 「何かあったら言ってね?英二の事は判っちゃうんだから…」 いつも、一緒にいたから。 肝心な気持ちに気付かなかったみたいだけど? ―――悟られないようにしてたからね。 「だーいじょうぶ。もう直った!」 俺は振りきるように1回跳ねた。 「あれ。、来てたんだ」 「酷いなーその言い方!周助君が寂しがると思って毎日来てるのにー」 「あは、ごめんごめん」 そんな2人を見ていて英二はふ、と笑みを浮かべた。 「エージ?」 「不二!泣かしたら俺が許さないぞ!」 バン、と銃を撃つ真似をしたりして。 一番仲が良い大好きな2人だから。 一番側で見守っててあげるよ。 ―――でも、泣かしたら奪っちゃうかんね? written by koo hiduki ..... 今回は空さんらしからぬ悲恋です。…もう菊ちゃんが痛くて 強制的に終了させました…もう書けない(苦笑) |