例えば、言葉の一つで喜びを感じること…

些細な言葉で一日を埋め尽くすことが出来たら。






五文字の言葉 ..... Happy Birthday to 不二先輩



2月28日、前日。





「不二ー。おっはよーん。そしてオメデトにゃー」
「有り難う、エージ」


正直、今朝由美子姉さんに言われるまで気付かなかった。
今日が―――正確には明日、だが―――自分の誕生日であることを。
由美子姉さんと、母さん、そして今のエージで3人目であるがイマイチ自分に成長して「おめでとう」な気分になれない。


「不二君、誕生日おめでとう」
「不二、おめでとう」
「29なんてさっすが天才だよなー」

エージの声を聞いて次々とクラスメートが口々に祝いの言葉を述べてくる。
まだ実感の涌かぬまま不二はそれを微笑みで受け取った。








「不二先輩誕生日オメデトーっスー」
「……おめでとっス」

桃が元気よく祝ってくれた。
なんとあの海堂まで…。

これ、二年からっス、とまさかプレゼントまで貰えると思ってなかった。


「有り難う、大切に使うね」


青学カラーのリストバンドだった。








「不二、不二」
「タカさん」
「お誕生日おめでとう」

これ、と特製の河村寿司弁当を貰った。
わさび寿司も入ってるそうだ。

「不二好みのばっかりだと思うよ」
「有り難う、タカさん」


嬉しい、かな…。







「不二はまだ3歳だな。来年は4歳か」

ノートを片手に乾がやってきた。

「不二、おめでとう」
「おめでとう」

気付けば大石もいて、一緒に祝ってくれる。
なんだか今年はやけに「おめでとう」の言葉を聞いた気がした。

だから、きっと、自然に出たのだろう。


「有り難う、二人とも」

その、言葉が。








「手塚、ここの問題わかる?」
「ああ…」

もうすぐ学期末試験なこともあって、帰る寸前に手塚を呼びとめた。
部長なのに会長なのにホントよく出来てる人間だと思う。

「ここは…」

手塚の説明をあたまに叩き込んだ。


「有り難う、助かったよ」

ノートを鞄に仕舞い「お疲れ様」と言って帰ろうとしたら。


「不二」

呼びとめられて、


「誕生日…おめでとう」

まさか、手塚にまで言われるなんて。


「有り難う、手塚」










夕飯前に裕太から電話がかかってきた。

もう今日たくさん言われたから何の為にか判ってる。
でも…こう嬉しいと思えたのは何年振りだろう。
むしろ、初めて、かもしれない…。

『兄貴?何笑ってんだよ』
「別に」
『ま、いーや。用件はそんだけだから。またな』
「うん、またね」



“またね”










PM 23:59


30…

31…


もうすぐ本当の誕生日が来ようとしていた。
28日の1日の狭間の一瞬―――





39…



42…



トゥルルルルルル………


けたたましく電話が鳴る。




「もしもし?」
『…』
「もしもし?」




『Happy Birthday!』


声が聞こえた瞬間に時は1日を迎えた。




「もしかして…リョーマ君?」
『そう。なに、アンタ気付かずに電話取ったわけ?』
「液晶の番号しか見なかったから」

偶然なのか。
ちゃんと時計を見てかけてきてくれたのだろうか。


『良かった。でもアンタが電話の側にいて―――いなかったら俺当日に言えなかったじゃん』

間に合ってよかった、と安堵する声がする。


「…ねえ、リョーマ君」
『なに?』
「―――…有り難う」
『…どういたしまして』





今までになくいろんなひとに祝ってもらって、

家族で始まって

最愛のひとで終わる―――




本当はなかった日だけれど、

皆が作ってくれたから。




有り難う




written by koo hiduki .....






この言葉の嵐はリョーマが皆に頼んで実現した…という
ことで最後はあまあまでおわそう、と思ってたんですけど…
実際無理でした!こんだけのひとが動かせたらスゴイしな!



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