早く会いたい。 英二に、逢いたい―――。 何分たったろう。 気づけばさっきよりは人通りが少なくなっていた。 「あーっ!もう!いい加減に来てもいいだろ英二!!」 こうなりゃあもうヤケクソだ。人が少ないことをいいことに、叫びまくった。 「ってゆーかなんで英二はあたしを誘ったんだこらぁ!違う人誘えばいいじゃんっ!彼女、あんなにかっこいいんだからいないはずないだろっ!!」 ときたま通るおばちゃんが、私のことを怪訝そうな目で見る。そんなのおかまいなしに、私は虚空を睨んだ。 ほんとに、 なんで来ないのよぉ・・・。 ―――その時、突然後ろから声が掛かった。 「ねぇ君ー、一人なの?」 「こんな夜遅くにカワイコちゃんがいたら危ないよー?」 「なんならオレたちが遊んであげよっか?」 数人の高校生らしき人達がニヤニヤしながら私の肩に手を置いた。 その手つきは、まるで吸い付くように私の肩をさわる。 怖い。 私は瞬時にそう思った。 「あ、あのっ、けっこうです、人とはぐれちゃっただけですから!」 「そーなの?じゃあオレたちが一緒に探してあげるよー」 「そうそう!見つかんなくても・・・オレたちが遊んであげるしぃ?」 「いえっ、けっこうです!一人で探します!」 「まぁそう言わずにさぁ・・・」 そう言って、一人の男が私の肩を強くゆすった。 それが怖くて、気持ち悪くて、私は目頭が熱くなった。 でもそれをぐっとこらえて、男たちを負けじと睨む。 こんな奴らの前で泣きたくなんか、なかった。 「いやですっ!」 「・・・ナニコイツ。泣きそうになってるし」 「まあそこも可愛いじゃんよ。なぁ、オレたちとオモシロイとこ行こうぜぇ?」 ・・・こんな奴らになんか、負けたくない。 「やだっっっ!!!」 我慢しきれなくて、私はついに叫んでしまった。 男たちの顔が、急に険しくなる。 私は咄嗟にベンチから逃げようとした。 怖くて怖くて、しかたがなかった。 泣きたくない、負けたくない、はずなのに・・・。 だけどすぐに私の手は男たちに捕まれてしまった。 「おい、いい加減にしろよテメェ」 「こっちが優しくしてりゃあつけあがりやがって」 「大人しくオレらについてくりゃいいんだよ!」 一人が、私の腕を無理矢理引っ張った。 「いたっ!!なにすんのっ!?放してよ!!私はあんたたちみたいな奴になんかついていかないからっ!」 もうやめてよ腐れ男ども。 そう言ってやりたいけど、それまで口に出したら何されるかわかんない。 怖い、怖い、怖い。 その思いが、私の中を駆けめぐる。 「テメエッ!!ぶっ飛ばすぞこのクソアマァッ!」 「歯ァくいしばんな!」 助けて・・・。 お願いだから、誰か助けて・・・。 助けて英二っ――――!! そう、心の中でアイツの名前を呼んだとき。 「きっくっまっるっビームっっっ!!!!!!」 「「「あっちぃっっっっ!!!!!!!!」」」 私の目の前で、男たちにココアらしきものが降りかかった。 男たちはあまりの熱さにもだえている。 火傷こそしないものの、それなりの苦痛はあるのだろう。 「大丈夫かっ!?」 突然名前を呼ばれ、驚いて振り返ると。 「えっ、英二!!」 そこには息を荒くした英二がいた。 「テメェ何すんだこのクソガキ!!死にてぇんなら今すぐ殺ってやろうか!?」 「おいどうすんだよ、この服!!クリーニング代よクソガキ!!」 男たちがすごい剣幕で声を上げる。クリーニング代なんて気にするなんて、以外に家庭的なヤツなのかも知れない。 怒鳴られた英二は男たちに動じもせず、きっと前を見据えた。 「おいお前ら!!俺のに手出さないでくんない!?」 「あぁ!?なんでテメェのようなクソガキにそんなこと言われなきゃなんねぇんだよ!?」 「は俺の彼女だ!!だからお前らなんかに渡すもんか!!」 「英二・・・」 英二は男たちに向かってそう叫んだ。 『は俺の彼女だ!!』 ―――彼女・・・・。 ・・・彼女ぉぉっっ!!?? 「ちょっと英二!!あたしはいつからあんたの彼女になったのっ!?」 「今から!!」 「あたしの気持ちはどうなるーっ!!」 「だって、俺のこと好きだろ?」 けろりと英二は答える。 「へっ!?すっ、好きっ!??」 私が、英二を、好き!!?? そんなこと、考えたこともなかった。 私は、英二が好き―――なの・・・? 「だって、見ててバレバレだったよ?」 「えええええっっっっっ!!!!?????」 「んなに驚かにゃくても・・・」 「あたしは英二が好きなの!?」 「うんそうだよ。」 ニッコリと英二は笑い、私の手を握った。 「だから、つきあってください」 「えっ・・・」 そうね。 私、英二のこと好きなのかも知れない。 英二のことが、好き。 大好き。 私も笑って、英二の手を握り返そうとした。 その時。 「おいテメェら!!!なに俺らの前でイチャツイてやがんだ、ああっ!?」 「見せつけてるつもりかコラァ!!」 ・・・・あぁ、そういえばいたね。忘れてた。 なんて言うと失礼かもしれないが、私たちはすっかりこいつらの存在を忘れていた。 鼻穴を広げて本気で怒っているあたり、羨ましいのだろう、私たちが。(笑) 「英二、どうしよ・・・」 私はちらっと英二を見る。 「うんとにゃぁ・・・・こうゆう時は・・・」 一呼吸置いて、ニッコリといつものようないたずらな笑顔で笑った。 「逃げるが勝ちっっ!!!」 真っ暗な公園。 その中に、一本のツリーが光を纏っていた。 私にできることは、何だろう。 それはきっと、英二を愛すること。 私はツリーを見上げた。 英二と二人、ツリーを見上げた。 それは毎年見慣れたツリーじゃなく。 眩しく煌めいて、見えた―――。 fin |