世界はとても広くて。 自分なんて、世界から見ればちっぽけな存在にしか 過ぎないのだろう。 だから、何億という人が暮らすこの世界で。 君というかけがえのない存在に出逢えたのはきっと。 出逢ったのは、本当に偶然だった。 テニスをしていなければ、まず出逢うことがなかった人。 テニスをしていても、帰国しなければ出逢えなかった人。 帰国しても、青学に入学しなければ出逢えなかった人。 沢山の偶然が重なって。 そうして、当たり前のように彼の事を好きになった。 まるで、初めから決められていた事のように。 何の躊躇いもなく、自分の心に入って来た彼。 どうしてこんなにも好きなんだろう。 その答えは、まだない。 「ねぇ、周助。」 部活も終わり、夕日が地平線へとその姿を隠してしまう頃。 「俺の事、いつ好きになったの?」 見上げるように尋ねたのは、彼の愛しい恋人である越前 リョーマ。 「どうしたの、いきなり。」 少し驚いて聞き返すと、リョーマは機嫌を損ねたのか、少し 頬を膨らませながら言い返してきた。 「いいじゃん!別に!今聞きたいんだから、周助は黙って 答えればいいの!!」 そう言って怒る姿も微笑ましくて。 本当に、猫のようだ。 プライドの高い、黒猫のような自分の恋人。 構い過ぎると邪険にするくせに、放っておくと拗ねる。 なのに、一度甘えてくると自分の都合なんてお構いなし。 いつだって自分を振り回す存在。 それでも。 愛おしいと思ってしまう自分は相当目の前の彼に惚れ込んで いるのだろう。 「周助!聞いてるの!?」 思考の海に沈んでいたらしい自分を引き上げ、きっと睨んで くる。 「あ、うん。ごめんね。」 「それで!俺の事、いつ好きになったの?」 不二は暫し目を閉じて考えると、やがて柔らかい微笑みを 携えながらリョーマを見つめた。 一瞬、リョーマの鼓動が速くなる。 「初めて君を見た時…からかな。多分。」 優しく囁き、細い手がリョーマの頭をそっと撫でる。 「君が荒井と一悶着起こした時、まずは君のプレイに惹かれたよ。 でも、どんどん君自身に惹かれていったんだ。」 そう言う不二の笑みはいつもの笑みではなく。 自分だけに向けてくれる、微笑み。 「だから、いつ好きになったかと聞かれたら、初めて君を 見た時から…と答えるしかないね。」 と、優しく微笑む彼に思い切り抱きつく。 「リョ、リョーマ君!」 「周助、ありがと。大好き!」 きゅ、と抱き締めて、暫し彼の温もりに身を任せる。 すると、力強く抱き締め返してくる腕。 彼の想いが自分を抱き締めている腕を通して伝わってくる気がして。 そのまま、そっと目を閉じた。 どうしてこんなにも好きなんだろう。 彼といると、いつも暖かい気持ちでいっぱいになっていく。 時には喧嘩もするし、すれ違う事だってあるけれど。 それだって、二人の大切な時間に変わっていくのだと、 今は知っているから。 だからなのだろうか。 どうしようもなく、彼が好きなのは。 彼といると、どんなに醜い感情でも一瞬で暖かな感情に変わる。 それは、いつだって笑って受け入れてくれるから。 ”どんな君だって、僕が好きな越前リョーマに変わりはないからね” ”どんな周助だって、俺の好きな周助は一人だけなんだから。” どんな自分だって、自分である事に変わりはないから、と。 その事に、どれだけ救われているだろうか。 一番大切な人に、自分の総てを受け止めて貰える事こそ、 きっととても幸せな事なのだろう。 「ねぇ、周助。」 「なんだい?」 互いに触れたくて、どちらから言う事もなく不二の家へ行って。 互いの熱を互いで収めた後。 ふと不二の腕の中にいたリョーマが呟く。 「俺ね…ずっと考えてたんだ…人の出逢いって、偶然だよね。 でも、でもね。俺はそれだけじゃないって…思ってる。」 抱き締めてくれている不二の首に腕を絡めて。 「今ここで俺が周助と一緒にいるのは…偶然じゃない。きっと、 必然だったんだって…そう思ってる。」 人の出逢いは偶然。 でも、必然。 人は誰しも、出逢うべき人に出逢っているのだ。 例えば、リョーマにとって不二がそうであるように。 不二にとってリョーマがそうであるように。 出逢うべき人の中でも、唯一無二の存在である人物と出逢えたならそれは。 それはきっと、奇跡。 「そうだね。今まで僕には自分のすべてを失っても守りたいと思える人はいなかった。 君に出逢って、君を好きになって初めて、僕は大切な存在を見つけたんだよ。」 軽く耳元に口付け、囁く。 彼にしか見せない、とびきりの笑顔を添えて。 「君が俺を変えてくれたんだ。」 たった一人の貴方に出逢えた奇跡。 この想いを、言葉に例える事なんて出来やしないけど。 もし例えられるなら。 「周助、出逢ってくれて有り難う。これからも宜しくね。」 「俺の方こそ、有り難う。何があっても絶対離さないからね。」 きっかけは偶然でも必然でも。 貴方に出逢えた事を、とても嬉しく思います。 言葉では言い尽くせない程のこの想いを。 少しでも綴って…。 FIN |