時計を見れば、ちょうどスプラッシュマウンテンのファストパス指定時刻に近い時間であった。
一行はそのままウエスタンランドからクリッターカントリーへと歩き出した。
2つの区域は隣合わせであるからすぐに水の音が耳に入ってくる。

「あれっ、飛び込むんスよねっ」

リョーマは待ちきれないとばかりに外から見える滝へと目を輝かせた。
……余談だが、手塚はその滝に卒倒しそうになり、悲愴な顔を浮かべている。

「チケットを確認させて頂きます、ファストパスの方はこちらへどうぞー」

入り口のお姉さんの声に誘われて4人は滝を見つつ先へと足を進めた。
洞窟のような造りになっている道の入り口で、ファストパスの方の列へと並び、猫のように跳ねる菊丸とそれを追うようにして身軽なリョーマが先頭を切って行った。





Mickey Holiday ..... 5th game



洞窟のような中は少々薄暗かった。
通常チケットで並んでいるお客さんの横をすいすいと抜けていく。ちょっとした優越感だ。

しかし、このファストパスも空いているという利点の反面途中に現れる梟(子供が「うさぎどんの話してー」と言ってふくろうが語りだすそうです)の語る話をゆっくり聞けなかったりという面もある。
その話に興味をそそられたのか、リョーマは一旦足を止める。
だが、後列のお客さんが来るのが見えたので諦めて足を進めた。



うねるような道のりを長く歩いてようやく乗車口が見える位置まで来た。
ファストパスと通常パスがちょうど合流する地点では、おねえさんが頑張って采配している。

「前のお客様に続いてお進みください」

不快にはならないファンタジックな声が耳に入る。
リョーマたち一行(何か三蔵一行みたい/既に漫画も違う)は前を行く家族に続いた。

「早く乗れそうっスね♪」

どんどん近付く水の音にリョーマの心は弾む。

「そーいや次は?どの組み合わせでいく?」
「いいよ、次は手塚で」
「え?」

ここまで来ると返ってアヤし過ぎる。

何故不二は先程から先手を打って順番を譲っているのか。

「じゃ、次は部長。一緒に乗りましょう」

しかしその言葉を受けてリョーマにそう言われてしまえばそこまで。
不二の微笑みからは両者は何も読み取ることは出来なかった…。




リョーマが乗り込んで、その後に手塚が続き。
2人の後ろに不二と菊丸が乗り込んだ。
同じ乗り物に、あと2組が乗り込み、流れを止めていたストッパーを係の人が解除する。

「メガネの方は飛んでしまうことがありますので、外してお乗りください。では、いってらっしゃい!」
「………メガネが飛ぶのか」

笑顔で見送られて、ガッタンと音を立てて機械は動き出した。

「部長、外さないんですか?」
「手塚ってあんまりメガネ外さないよな〜」

後ろの菊丸にまで期待の目線を向けられて、う…と先に詰まった。
はっきり言って、乗り物に乗っていて、しかもディズニーで!メガネが落ちるなんてアホみたいな話は御免被りたい。
…だが、素直にメガネを外すというのも周りは見えなくなるし不便で仕方ない。

………手塚は3秒で答えを出した。

「……このままで構わない」

水の上に乗って、進む空間ではうさぎを中心に物語が織り成されていた。
楽しい音楽に乗せて、乗り物は進んでいく。
リョーマは周りの世界に見入っていた。

「うさぎさんが、ハチに襲われてる……」

そんなことをリョーマがぼやいてすぐ、大量のハチの音が耳に届く。
リアルなまでのハチの大群だった。さすがディズニー。


ガッタン。

と乗り物に衝撃が来たかと思うと、上へ向い始めた。
先に見えるのは、青いばかりの空。太陽の光。

「いよいよ…、ってことだね」
「おチビ、掴まってないと落ちるかもよ?」

後ろに乗る2人がにやっと笑い、手塚もメガネをもう一度押し上げた。


かたん、かたん、かたん、かたん…………っ




「………ぎゃあああああぁぁぁ」


乗り物が傾いて一気にそこから、


落ちた。




ざっぱああああん


一番前にいた水飛沫をリョーマと手塚は思い切り浴びた。

ぽたん、ぽたん、と髪から水が滴る。

「まさか……これほどだとは思わなかった」
「……あぁ」
「おチビ?だいじょーぶ?」
「っていうか、手塚も無事?」

後ろ2人から声が掛かる。
手塚は丁寧に濡れたメガネを吹き掛け直したが、既に意識は半分飛んでいた……。


「楽しかったねー」
「ねー、次何乗るー?」

一緒に乗っていた後ろのお姉さんたちは既に復活したらしく笑顔を取り戻している。
リョーマたちも若さか、しっかり地に足はついている。が…。

そういや、と菊丸がにや〜っと笑った。

「このアトラクションって、あの落ちる瞬間に写真撮ってくれるんだよ。手塚の恐怖の顔を見てやろう♪」

え、と固まったのは手塚である。
リョーマも全然気付かなかった…、とちょっと写真の出来に不安を抱く。
不二は…そんなことはどこ吹く風、とても涼しい顔をしていた。

そういえば、フラッシュが見えた気がする…。
目の前に並んでいる写真をみて、溜息を吐いた。


「えっと、さっき届いたばかりの赤い枠だから…あ、あれか!」
「綺麗に撮れてるじゃない。動いている被写体の割には」
「……(無言)」←手塚(笑)
「げ…変な顔。先輩たちだけ笑っててズルイ」
「それも記念だって。じゃ、俺1枚買ってくんね!」

菊丸が近くのカウンターへと注文しに行った。




「さぁってと、次はドコ行くー?」
「妥当に…隣にある、『ホーンテッドマンション』とか?」
「お化け屋敷みたいなのすか?」
「…それほど怖くはないけどね」

4人は、墓地が周りに立つ館へと足を進めた。





立ちそびえる暗い館。

「ホーンテッドマンション、ただいま40分待ちです」

入口に佇むメイドのような扮装をした女性がそうアナウンスしていた。
40分くらいなら…と4人は最後列へと並んだ。

雰囲気がなんとなく怖さを醸し出させる。
けれど屋敷は堂々と高く建ち、とても立派なものだった。
細かなところまで丁寧な造り―――さすがはディズニー。

「これ終わったら食事行く?」
「俺、そろそろ小腹空いて来たー」
「どこか行きたいとこある?リョーマくん」
「んー……どこでもいっスよ。オススメとかあるんですか?」
「何系がいいとかあれば、それに添うようにするけど…アジアとか地中海とか」
「おいしければなんでも」

そこそこどこも高級な味を占めてるし、ただ値段がちょっと張るが、不二にはそれは愚問であろう…。
デカそうな家に住んでる手塚然り。
家にテニスコート持ってるアリエナイ一家の越前然り。
―――財布が切ないのは兄弟も多い菊丸であるが、彼は今日のこの日のため、姉に借金してまで懐を温かくしていた。

「あ、じゃーさ。俺、ここ行きたいかも」

菊丸がある一点を指す。
イッツ・ア・スモールワールド近くに出来た新しいレストラン。

「不思議な国のアリス♪」

激混んでいるだろうことが予想されたが、リョーマも興味を示し、そこに決まった。


列はようやく館内へと入るところまで来た。

「前の方に続いて中にお入りください」

誘導に従って、列を乱して中へと押し込まれる。
パタン…とドアが閉じられると、中の肖像画が話し始めた。
4人は食い入るように話しに耳を傾け画を凝視していた。
他の観客も同様、場はとても静まり返っている。


話しが終わったかと思うと次に突然扉が開き、案内の人が先を促した。
そのまま進むとすぐにかの3人乗りの乗り物が止まることなく動いている。
次から次へと人が乗っていき、ようやくリョーマたちの番も来た。

「じゃ、次は僕だよね」

さ、っとリョーマの肩を引いて不二はさっさと乗り込み、残された菊丸と手塚は渋々2人で乗り込んだ。

「……アイツ」
「……こんな暗闇じゃおチビちゃん、襲われちゃうぅ〜」

ニヤリと目が光ったような気さえする乗り込む際の不二の顔。
菊丸と手塚はアトラクションどころじゃなかった……。




written by koo hiduki .....






写真売りこのバイト、壇君にしようかと思ってたんですけど…結構混ぜるのムズイ。
アリスのレストラン行ったことないんだけど……。



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