Cage3 ..... thanks 8000 HIT for 香様



だって最初は遊びだったんだ・・・。

向こうではそんな関係当たり前で。
人肌が恋しくなったんだけ。

本気で人を好きになることをまだ知らなかったから・・・。











部室の鍵は開いていた。
昨日の出来事が鮮明に思い出される。
そうだ・・・それで鍵を閉めていかなかったのだ。それ以上、ここにいることが出来なかったから。
手塚の視線はある一点に向いていた。

不二と越前が重なっていた辺り―――

何故こんなに二人の関係が気になるというのだろうか。


俺には関係ない。

俺には関係ない。



呪文のようにそう繰り返しても、逆効果なのだ・・・。







「手塚?早いな」

考えに没頭して来訪者に気付かなかった。

見ると―――乾だった。


姿だけ確認すると手塚はふいと視線を逸らした。

「何だ、浮かない顔をしているな」
「・・・そうか?」
「ああ。何か二つ以上の事に捕らわれていて収集つかなくなっている―――そんなところかな。・・・越前の事か?」
「・・・・・・・・・・・・」
持っていたノートをパタンと閉じて乾が顔を手塚の方へ向けると手塚も逸らしていた視線を乾に持って来た。

「図星なのか」
「・・・越前の事を気にしていたという訳ではない」
「そうか?じゃ、不二かな」

すっぱりと言い切る乾に再び手塚は押し黙った。

「ふ・・・手塚は無表情な割に分かり易いな」
「そうか?」
「まぁ、俺が判断出来たのは手塚だけ見ていたからではないけれどね」
「・・・どういう意味だ?」
「ここの所不二と越前の調子が普段より悪い。手塚も含めて、だけどね」

乾は普段よりショットの正確さが三割も落ちている・・・とブツブツとデータを言い出した。
手塚はよく見ているんだな・・・と改めて乾のデータに対する正確さを知った。

乾に、聞いてみようか―――

コイツなら、何か、知っているかもしれない・・・




「で、何かあったのか?」
「お前には関係ないだろう・・・」
「お前の変化は少なからず部に影響を与える。コーチとしてそれを見過ごす事は出来ないだろう」

乾はまた何か言いながら頭の中で情報の整理をしているようだった。






「・・・・・・だが、」
「ん?」


「例え話だが。自分を好きだと言った相手が違う相手と付き合っていたとしたらどうする?」



(つまり・・・。手塚を好きだと言った越前が不二と付き合っていた、とそんなとこかな)

乾は考え込む仕草をしてノートに少し書き足した。



「手塚はその告白された相手が好きなのか?」

乾はノートに目線を落としたままそう尋ねた。

「・・・それが、この問題とどう関係あるというんだ?」
「別に何とも思っていないのなら二人の関係がどうであれ、手塚には関係ないだろう?・・・っとそろそろ時間だな」

乾は部室の時計を見てコートに向かおうと椅子を引いた。

「これから、手塚がどう動くかが大事だと思うよ?」


パタンと閉じられたドアから目が離せないまま、手塚は深く溜息をついた。






















「にゃ?おーチビちゃーん、おっはよー」
「ちっス」

余りいい気分であったわけではないが、リョーマは出来る限り普通に振舞った。
いつものように、素っ気無く先輩と挨拶を交わす。

「お、よぉ、越前」
「はよっす、桃先輩」
「おや、越前が寝坊しないとは珍しいな・・・おはよう」
「たまには。うぃーっス、乾先輩。・・・じゃ俺着替えて来るんで」

テニスバックを持ち直してジャージに着替える為に部室に向かった。



視界に、見知った姿が入ったがリョーマは敢えて気付かない振りをして、そのまま通り過ぎようとした。


が・・・



「おはよう、越前君」
「・・・おはようございます、不二先輩」

お互いを呼ぶその言葉に棘が入る。

不二はすっと越前の耳に口元を近づけ誰にも聞こえないように言った。
「・・・昨日あんなことがあったのに、朝練出るなんて結構神経図太いね・・・というより、眠れなかっただけかな?」
クス・・・と不二は微笑みを浮かべた。

「先輩とはもう無関係だから」
「当たり前だよ。僕ももう君になんて用は無いよ」

リョーマは不二に一瞥をくれてさっさと歩き出した。
不二ももうリョーマに振りかえる事なくコートに向かう。



「当たり前・・・、ね」
確認取るまでもないことだ、と越前は一人呟いた。去っていくその人物をじっと見据える。

あのひとが、俺のことを何とも思っていない事ぐらい最初から判っていた。
表面上だけとはいえ、関係だけが深まるにつれてその瞳に宿した黒い影にも、薄々気付いていた。

その影の理由―――・・・


俺、に対する憎しみなら・・・



見据えた視線のその先。

僅かに不二の表情が変わったように見えた。
その変化は本当に僅かなものだったけれども。


視線の先の、不二の、さらにその視線の先―――








ふ、と越前は鼻先で笑った。

























ダン・・・ッ


不二は強く自分の机の上で拳を握った。

『無関係だから』
『君になんてもう用は無いよ』

そう、もう用は無い―――

越前と関係を持ったのはただ自分の為だったのだから。


なのに、何故だろう



全てめちゃめちゃに壊してやった筈なのに。
越前は指してダメージを受けていないようだった。
むしろすごく冷静で―――・・・。


ダメージを受けて余裕がなくなっているのは僕の方だというのか?


















「・・・少し、いいか?」





―――手塚・・・ッ






今は君には会いたくなかったのに。
僕が冷静ないところなんて君は見せたくはないんだよ。





「その・・・昨日の事なんだが」


しかも君の口から出る話題は越前絡み?
越前の名前なんて聞きたくも無いというのに―――


不二は目を閉じて心を静めた。




「昨日・・・?ああ、あれね」

すると、自分でも驚くほど冷静になれた。


「俺は・・・越前が、好きだ」
「へえ・・・それで?」
「あぁ・・・それで、例えお前も越前の事が好きなんだとしても―――」


不二はそこで机を思いきり叩き手塚の言葉を遮った。


「何、言ってるの・・・?」

低い小さく震える声で不二は言った。

「だから・・・俺にとってお前という存在が」
「はっ・・・手塚らしいよね、そうやって上手く納めようというところ。僕も越前も両方を上手く手中に納めようってわけ?」
「何を言っている?不二?」

手塚が問うように見つめている。
ああ、何で君はそんなに優しいんだろう。









そんなところも全て好きだったのに・・・






君は僕より越前を選ぶんだね・・・










「いいよ・・・」
「不二?」
「越前、あげるよ。僕が欲しいのは彼じゃないから」


欲しいのは、


本当に欲しかったのは。





「では・・・不二は、何が欲しいんだ?」
「言ったらくれるわけ?」
「ものによるが・・・善処する」
「ふーん・・・」


不二はふわっと微笑んで手塚の首に腕を回し抱き着いた。



「不二・・・ッ!?」
「本当に欲しいのは手塚・・・君だよ」




不二はさらに力を入れて手塚に抱き着いた。





「不二・・・すまん」





「俺が、好きなのは・・・越前だから、それは出来ない」





「俺にとってお前は、大事な親友だから」





「俺にとって、お前という存在は不可欠だから・・・その、これからも『親友』として側にいて欲しい、と思ってる」







上から降ってくる言葉の一つ一つが、無器用な手塚が考えて、僕の為に言ってくれた言葉なんだということが伝わる。


バカだな、手塚・・・

こんな僕みたいな酷いやつ、ほっておけばいいのに。
しかもバカ正直に気持ちまで伝えるなんてさ。

ホント君らしいよ。

そんな君だから好きだったんだけど・・・。




「行って」

「不二?」

「越前君とこ・・・待ってる、筈だから」

「・・・不二」

突き放すように手塚の側を離れた。
手塚の足が遠慮がちにドア口に向かう。

「・・・不二、ありがとう」




君はホントバカだね。




不二は椅子に座りなおして小さな声で消えた手塚の後姿に「アリガト」と呟いた。




written by koo hiduki .....

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