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ポーン… 初めて音に共鳴した。 Canon ..... Thanks 170000 HIT for さな様 水曜日の昼休み。 一時間だけ聞こえる、旋律。 軽やかに奏でられる音楽。 音楽室の前を歩きそのまま佇むもの… 校内に響く音楽に足を止めるもの… 校庭では走っていた生徒は思わず足を止めた。 そしてゆるやかになった旋律を聞いてここまでは序章に過ぎなかったことを悟る。 ―――甲高い声と共に音は再び動き始めた。 音楽に乗って声が踊っていた。 というより―――音楽に声が絡んでいた。 日本語ではなく英語なのだろうか、言葉の意味は分からない。 なのに、聞くものは涙が溢れた。 「―――ッ……すいません、外しました」 音楽を止めることとなったのは、歌い手の声だった。 甲高く聞こえていた筈の声とは一転して若干高い、それでも低い少年の声へと戻る。 静かで2人だけのようだった空間も、再び動き出した外界からの騒音で壊れていった。 「珍しいね、どうかした?」 「いえ。スイマセン、不二先輩」 「いいよ。いつも付き合って貰ってるしね。休もうか」 はい、と声を出し続けたミネラルウォーターのペットボトルが差し出された。 それを一口飲んで、リョーマは喉を潤した。 そして息を深く吸った。 リョーマがこの部屋で毎週水曜不二先輩の相手を務め始めて、もう1ヶ月を経とうとしている。 切欠は…軽く口ずさんだ鼻歌を先輩に聞かれたことだった。 まだ成長しきってないリョーマの声を、不二に気に入られたのだ。 『僕のピアノで歌ってくれないか?』 そう、言われて承諾した。 せざるを得なかった。…それが、とても真剣なものだったから。 以来、不二とリョーマは水曜の昼休みこうして音合わせをしている。 後から発表の場まであることを知り、承諾したことを心底後悔した。 前言撤回出来る相手でもなし、腹をくくるしかなかった。 「毎度のことだけど、お疲れ様」 「先輩も」 「うん。じゃ、また部活でね」 「はい」 音楽室の扉の前で短く会話を交わすと不二は鍵を返すために職員室へ、越前の方はまっすぐ自分の教室へ、とすぐ別れた。 次、移動だっけ…、とぼんやり思いながら富士はさして急ぐこともせず、一段ずつ慎重に階段を降りていった。 「鍵、有り難う御座いました」 ぺこ、と軽く頭を下げて職員室の扉を静かに閉める。 時計を見れば昼休み終了3分前。 少し急ごうかと富士は早歩きで教室へ向かおうと足をそちらに向けた。 「不二ッ!」 「英二」 呼ばれた方向へ顔を上げると、クラスメートの菊丸英二の姿があった。 彼の手には次の時間である理科の教科書が握られている。 「不二のも持ってきたよん」 「助かるよ、有り難う」 「このまま理科室向かおう」 「そうだね」 有り難いクラスメートの心遣いでどうやら遅刻せずには済みそうだった。 教室とは逆方向に2人で歩き出す。 「練習?あ、そっか今日水曜だもんね」 「うん。コンクール迫ってきたからね」 「大変だにゃー……でも、結構噂だよね、おチビの歌声」 「そうなの?」 「うんにゃ。おチビの英語ってカンペキじゃん?そんでもって多分まだ声変わりしてないっしょ。少し高い感じの、すごく綺麗だってオンナのこたちが話してた」 「へー。確かに。間近で聞いててもすごくいいよ」 「あと『伴奏が不二クンなんて最高〜!』だってさ」 「英二、別に声真似はいらないよ」 わざわざ声のトーンを上げて話す菊丸に不二は苦笑で返した。 その次の週の水曜日もまた、2人は音楽室に居た。 なかなかある一箇所の音程がリョーマが掴めなかった。 思案して、不二はリョーマを自分の元へと呼び、一つ一つ音を確認させた。 「じゃ、ドレミからいくよ」 「ら・ら・ら・ら・ら・ら…」 ドレミの順で『ら』で音階を追っていく。 それからその出ない箇所を『ら』でなぞった。 「じゃ次は僕も一緒に歌うから。歌詞を載せてみよう」 「え?」 不二が弾き語り始めて、リョーマは驚く。 初めて聞く不二の歌声だった。 その不二の横で、リョーマは声を重ねた。 リョーマが一人で歌えるようになると、不二は器用に音程をズラして、コーラスになった。 いつもと違う声が2人を包んだ…。 「歌えるようになったね」 「先輩…弾き語りまで出来るんスね」 「たまたまだよ」 「ま、いースけど」 「越前」 昼休みもそろそろ終わる。 部屋を出ていこうとしていたリョーマを不二が呼びとめた。 「コンサート、頑張ろうね」 「……はい」 発表会当日。 コンサート会場は近くの市民会館に設けられ、不二以外にも各校の代表者たちがそれぞれ演奏した。 不二の出番になって、ゆっくりと正装した不二が壇上に上がる。 続いてリョーマがステージに立った。 2人は揃って客席に向かいお辞儀をする。 シーンと静かな空間にピアノの音が流れ始めた。 ピアノに乗せて、言葉が流れる。 演奏が終わると、場内には拍手が巻き起こった―――。 演奏が終わり、舞台から降りて、不二はリョーマに駆け寄った。 「越前!」 「…不二先輩」 「有り難う」 不二はにこっと笑いそのままリョーマを抱き締めた。 「…先輩っ」 「あ、ゴメン、つい」 リョーマを離すと、またニッコリと笑った。 「また、機会があったら歌ってくれる?」 「―――機械があったら」 「そう言うと思ったよ」 そして不二は先生に呼ばれて行ってしまった。 不二の代わりにリョーマのところへ、菊丸が寄ってくる。 「おチビちゃーんvよかったよー」 「……どもっス」 少し顔を下に向けてるリョーマの顔を菊丸は覗き込んだ。 「どうしたの、おチビ―――」 ―――顔、真っ赤だよ? リョーマは顔を隠すように下を向いたまま、逃げるようにその場から走り去った。 written by koo hiduki ..... 謝ることしか出来ません。お待たせし過ぎて申し訳ありません。 |