whereabouts... ver. KR



「じゃんけん・・・っ」

「「ポンっ!!」」



「ぎゃ。負けたーっ!」
「よっしゃ、エージ先輩、頼みましたよー」
じゃんけんに買った桃城はさっさとその場を離れていった。


「くっそぉ〜、桃の奴」

菊丸は仕方なさそうにボール籠を運びだす。
今日は日曜日で本来ならば練習はない。しかし三日後に試合を控えたレギュラー陣は特別にコートを開けて貰い練習をしていた。
しかし普段とは変わって一年生がいないのでボールやコート整備等諸準備を自分達でやらねばならなかった。当然片付けも同様である。

「仕方ないっすね・・・とっととやって早く帰りましょ」
後ろから鋭い声がかかる。
もう一人の負けた相手、越前リョーマである。
ちょっとラッキーだったかも・・・と菊丸は思った。

ガラガラとボール籠を一人一籠ずつ倉庫に向かって押しながら菊丸はリョーマに話し掛けた。

「おチビちゃん、じゃんけん弱かったんだね」
「弱いとかいうより・・・あれはずるいっすよ」
「仕方ないなー。おチビはまだ一年生なんだから」

リョーマは一年生だからという理由で不二先輩とじゃんけんをしたのである。
どういうわけだか、不二はこういう機会の勝負では絶対負けない。
ソレを承知の上でリョーマは不二と対戦したのである。(じゃんけんだって)
反対を返せば不二に勝つだけで片付けからは逃れられる―――けれど考えが甘かった。上手く口車に乗せられたのである。



「エージ先輩ー!ネット片すんで端持って貰えます?」

「ほいほーいっと」
二人係りでネットをたたみ、それを倉庫にしまう。

「これで終わりっと」
「休日練習すんのって片付けとかがめんどーっすね」

越前君は一年だから休日も何も関係ないと思うが・・・触れないでおこう。
やっと片付けを終えて、制服に着替え帰路に着いた。
途中で菊丸は自動販売機に寄った。
後ろを振り返り先輩らしくリョーマに言う。

「おチビちゃん、飲みもの奢っちゃるよ?ファンタでい?」

念の為尋ねると、遠慮を知らない一年は少し微笑んで味の指定をして来た。

「あ、レモン味で」
「りょーかい☆」

がこんがこん、と音がして自分の分のポカリと、ファンタを取り出した。

「ほい」
「どもっす」
二人で並んでベンチに座る。そーいえばこんな風に二人だけになるのは初めてかもしれない。





暫く無言で過ぎると、リョーマの身体が傾き菊丸に寄り掛かった。
「おチビ?」
ちょっとビックリしてけど平静を装う。

「エージ先輩・・・」

ごきゅ。


リョーマは頭だけを上に向けて顔を覗かせた。

普段どんなに生意気な事を言ってて大人びてるから気付いてなかったけれど、そこにはまだ一年生という自分より二つ下の幼い表情が残っていた。
鼓動が早くなる。
寄り添ってるから気付かれてしまうかもしれない。

「俺すっごいドキドキいってる・・・」

え?


小さい声で聞き取り難かったけど確かにそう聞こえた。
菊丸は腕を動かしてリョーマの小さい身体を抱き締めた。

「えーじせんぱ・・・」
「聞こえる?俺もドキドキいってる」

どくん、どくん・・・


背中から伝わる心臓の音が自分のと重なる。

「一緒だね」
に、と菊丸の腕の中でリョーマは微笑んだ。



菊丸は急に立ちあがり、さあて帰るか、と言ってリョーマの手を取った。
手を引かれてついていく形になった。
菊丸はそのまま黙って、リョーマの家に向かう。

途中で、あっ、と叫んで止まった。

「ゴメン・・・俺おチビちゃん家知らないんだった」
正門で別れる際にこっちに曲がるからとりあえず進んでみたものの、これから先の道がわからないのでは進みようがない。
リョーマはそんな菊丸をクスっと笑った。

「こっちっす」
そういって今度はリョーマの方が菊丸の手を引いた。

「送って貰っていいんすか?」
「いいんだよーん。俺がそうしたいんだし」
まだおチビと一緒にいたいしね・・・という本音は口にすることなく飲み込んだ。







「ねえ・・・」

もうすぐ越前家が見えるところで繋いだ手をぎゅっと引いてリョーマは立ち止まった。
「俺、先輩といるからドキドキするんだけど・・・」
何でか、先輩といるとあったかくなって鼓動が激しくなるんだ。




それって―――・・・


「俺、先輩の事が―――」


菊丸は困ったような嬉しいような顔をして、ぎゅっとリョーマをさっきみたいに抱き締めた。

「あーぁ、手出さないつもりだったのに」


始めから予感はしてたけれど。自分はどんどん嵌ってしまう気がするから。

「好きだよ」


そうして菊丸は両手でリョーマの顔を包みキスを落とした。



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